【京都新聞】 福島原発被災のいま−南区でシンポ 内部被ばくが危険 「被害を矮小化」 政府を批判
【京都新聞2011年7月4日付朝刊】
福島原発被災の今−南区でシンポ 内部被ばくが危険 「被害を矮小化」 政府を批判
福島第1原発事故の影響を考えるシンポジウム「ビキニ事件の真実と福島原発被災のいま−軽視される低レベル放射線内部被曝を考える」が3日、京都市南区の龍谷大学アバンティ響都ホールで開かれ、パネリストらが政府の「ただちに健康に影響はない」などとする姿勢を批判した。
非核の政府を求める京都の会など京都の非核・反戦11団体や高知県太平洋核実験被災支援センター、広島市立大などの共催で、市民ら260人が参加した。
シンポでは、琉球大学の矢ヶ崎克馬氏が内部被ばくの危険性を説明。ガンマ線による外部被ばくより体内放射性物質のアルファ線による内部被ばくのほうが体内遺伝子への損傷は甚大とし、「(米国軍事戦略に基づく)国際放射線防護委員会(ICRP)の基準は内部被ばくを無視しており、この基準で『福島に放射線被害はない』という研究者が一番悪い」と訴えた。
広島市立大平和研究所の高橋博子講師は、ICRPの「緊急時基準」を参考に原発作業員や福島県の学校の安全基準が緩和されたことについて、「ICRPの緊急時は『核戦争下』といいかえるべき。学校に20ミリシーベルトを適用するのは異常」と指摘。「全国の子どもたちの抜けた乳歯は『福島』の証拠として手元に残して」と強調した。
ビキニ事件を研究する高知県太平洋核実験被災支援センターの山下正寿事務局長は「現在の政府対応は、1954年のビキニ事件で多くの漁師が被ばくしながら、第5福竜丸だけに被害を絞って矮小化した当時の政府とよく似ている」と批判した。
(後藤竜介)
【毎日新聞2011年7月4日付朝刊】
東日本大震災:ビキニ水爆教訓に 放射能調査、国の責任で−−京都でシンポ /高知
http://mainichi.jp/area/kochi/news/20110704ddlk39040335000c.html
◇山下さん講演
57年前のビキニ水爆を通じて福島第一原発事故を考えるシンポジウムが3日、龍谷大アバンティ響都ホール(京都市南区)であり、県太平洋核実験被災支援センターの山下正寿事務局長らが、内部被ばくの危険性について警鐘を鳴らした。
ビキニ環礁水爆実験で被災したマグロ漁船員を調査している同センターや「非核の政府を求める京都の会」など14団体が共催。放射線の健康被害や米国の核実験に詳しい研究者らが登壇した。
山下事務局長は約260人を前に講演。先月27日から3日間、福島県や茨城県沿岸部などを視察した際、地下にたまった汚染水の流出防止策を政府に求めるよう各地の漁協に提言したという。「大事なのは海洋汚染をどう防ぐか。カツオなども放射能に汚染される可能性もある」と危ぐした。
1954年3月のビキニ水爆は、水揚げされた多くのマグロに放射能汚染があったが、「政治決着」によって検査は打ち切られたと指摘し、「必要なことは、きちんと調査して、数値を示した上で消費者に魚を届けること。ビキニ事件のように調査が打ち切られることがないよう、注意しなければならない」と語った。
シンポでは、政府が繰り返してきた「ただちに健康に影響はない」という説明について、研究者から批判が相次いだ。高橋博子・広島市立大広島平和研究所講師は「広島の原爆投下後にも、米政府は残留放射線の影響はないという声明を出した。今回の事故は、政府に正確な調査を求めた上で、さらに市民としても独自に調べていかないといけない」と呼びかけた。【小坂剛志】
毎日新聞 2011年7月4日 地方版