(緊急声明)超高濃度汚染水の漏洩を招いた東電、無策な原子力規制委員会、安倍政権を糾弾し、抜本的な対策を要求する−原発再稼働を画策する暇と金があったら汚染水対策に回せ:汚染水制御もできないときに原発輸出を画策するな−
(緊急声明)超高濃度汚染水の漏洩を招いた東電、無策な原子力規制委員会、安倍政権を糾弾し、抜本的な対策を要求する
−原発再稼働を画策する暇と金があったら汚染水対策に回せ:汚染水制御もできないときに原発輸出を画策するな−
●起草:「汚染水問題を憂う京都府民の会」(代表世話人 木原壯林)
●2・23緊急討論集会@京都大学「原発再稼動をどうやって止めるのか」参加者一同(49名)の同意を得て採択
福島からの現地報告をされる南相馬市在住のルポライター奥村岳志さん(写真撮影:高取利喜恵さん)(写真撮影:和田美登里さん)
会場風景:フロアから発言されるキンカン行動の村上敏明さん(写真撮影:高取利喜恵さん)
東京電力福島第一原子力発電所では、2月19日夜、1リッターあたり2億3千万ベクレル(Bq)のストロンチウム90、9300 Bqのセシウム137を含む、超高濃度汚染水約100トンが汚染水タンクを囲う堰の外に流出した。水中法定基準はそれぞれ 30、90 Bq、天然水中には両者ともほとんど含まれていないことを考え合わせれば、途方もない高濃度である。その原因は、配管の弁の故障あるいは誤操作によって予定したタンクとは別の満杯のタンクに汚染水を移送したためであり、誠にお粗末である。また、この漏洩はパトロール中の作業員が見つけたというが、当該作業員の被曝が懸念される。この漏洩に関して、水産物汚染と風評被害による水産関係者への打撃は察するに余りある。
現在の対策では、汚染水の流出食い止めや除染は不可能
前述のように汚染水の漏洩は、ますます深刻になっているが、現在の対策(500億円程度のいい加減な規模)では、汚染水流出は止められない。汚染水対策は絶望的とさえいえる。多核種除染装置(ALPS)のような装置で汚染水が除染できるかのように喧伝しているが、このような大型装置を雑多な成分を含む汚染水に連続適用することは不可能であり、長期のメンテナンスも不可能に近い。実際、現在もその性能は発揮されていない。トリチウムを除去する方法はない。さらに、汚染水の流出と地下水の流入を止めるために、凍土壁が計画されているが、本当に有効なものができるのか、長期維持できるかは未知である(とくに大地震や大規模停電のとき)。一方、俄か作りの汚染水タンクはいつ倒壊するか分からないし、タンクは満杯に近い。今回の漏洩もタンクの不備に原因がある。凍土壁が壊れたり、地震などでタンクが多数倒壊するととんでもない量の放射能が流出する。
このように深刻な状況にある原発サイトには、放射線レベルが極めて高い場所が随所にあり、被曝労働の強制が行われ、人員不足にもなっている。にも拘らず、事故はコントロールされているとして世を欺きながら誘致したオリンピックとアベノミクスによる投資の拡大で除染対策費(セメント、鉄筋などの資材と人件費)が高騰し、汚染水対策や除染は遅延し、うやむやにされようとしている(海洋投棄や被曝管理の上限の緩和が画策されている)。
結局、政府、電力、財界は、汚染水漏れに国民が慣らされ、海洋放出が当たり前と考えるようになるように誘導している。
原子力規制委員会、規制庁、関連委員会に汚染水対策能力はない
原子力規制委員会は、原発や再処理を推進し、「もんじゅ」を傘下に持つ日本原子力研究開発機構(JAEA)2人、原子力利用推進の日本アイソトープ協会1人と、5分の3が原子力ムラ出身であり、ムラ作りには熱心であっても科学技術の基礎と現状が分かる人たちではない。従って、東電、原発メーカー、ゼネコン、原子力関係者の提案を聴いて判断するだけである。とくに、化学や化学プラントが分かる人はいないことは、汚染水問題にとって深刻である。広く人材を求めれば、もっと有効な提案(肯定的、否定的は問わず)が出るはずであるが、原発推進で「原子力ムラ」を維持しようとする政府や財界の立場は、それを阻害している。
一方、規制庁は「原子力ムラ」を作った原子力安全・保安院、内閣原子力安全委員会、文科省原子力関連部門からの移動の500人で構成され(これに原子力安全基盤機構の300人程度を吸収予定)、「原子力ムラ」体質は何ら改善されていないから、抜本的な汚染水対策を実施できるところではない。
規制委や規制庁は、原発導入で CO2 を削減しようとする(それ自身誤りで、原発による海水温度の上昇は、CO2の増加とサンゴ礁の破壊を招く)環境庁の外局であるから、汚染水垂れ流しに国民を慣れさせることによって、原発を維持しようとしている。
汚染水対策関連部署には、経産省傘下に汚染水対策委員会があるが、JAEA、東電などの原発推進者が大半で、東電や原発メーカー、ゼネコンの提出資料を検討するだけである。同委員会の下にはトリチウム特別委員会があるが、トリチウムを海洋放出するための検討委員会である。
これらの委員会の親委員会は、内閣府原子力災害対策本部・廃炉・汚染水対策チームであるが、チーム長が経産大臣、事務局長が経産副大臣で、内閣官房副長官、関係省庁副大臣、規制委員長が名を連ねているように、経済の負担となる汚染水対策をまじめにやれるはずがない。
抜本的かつ強力な汚染水対策を求める
汚染水流出は、人類の時空を超えた犯罪である。すべてに優先する徹底した汚染水対策を断固として要求する。早急かつ現在とは比較にならないほど強力な汚染水対策を実行せよ(下記、汚染水対策の例を参照)。そのとき、被曝労働は最低限に抑えよ。要する費用は、電力会社と原子力企業に負担させ、政府は大企業を優遇する税金を汚染水対策に廻すことを要求する。一方、原発再稼働の画策を即刻中止し、再稼働に割く時間と資金で汚染水対策を実行せよ。汚染水の制御もできないときに原発輸出を画策するな。なお、二度と汚染水発生源を作らないための唯一の方法は、世界中の原発を即時全廃することである。
福島からの現地報告をされる南相馬市在住のルポライター奥村岳志さん(写真撮影:高取利喜恵さん)
(汚染水対策の例:文責木原)
染水の除染はできなくても、外洋への流出を防ぐ方法はある。
今考えられている堤防より 10 倍以上広域(例えば半径 数 km 位の広域)に深さ数 100 m (下部は、岩盤か粘土質土壌に届くようにする)の堤防を築き、原発サイトを完全に囲み(広域にすれば、建設時の被爆労働も避け得る)、汚染水の外洋への流出と地下水の流入を避ける。また、その上部をドーム状シェルターで完全に覆い雨水を避ける。このようにしてこの地域を包囲し、外部から遮蔽する。事故炉の冷却は、シェルター内の汚染水を循環して行い、汚染水量の増加を避ける。こうして汚染水の増加と流出を止めた後、汚染水の処理保管法を考える(まともな処理保管法を考えるには、長い時間が必要)。この壁なら、現有の技術でも可能と考えられるが、膨大な費用がかかるので、大企業の膨張だけを考える政治の下では実行できない。問題は、東電や政府が、わずかなお金(数百億程度)で胡麻化して、本格的な漏洩防止策を実行しないところにある。早急に、電力会社や原発製造企業から数兆円を強制徴収して、汚染水対策を講じるべきであろう。
即刻、規制委員会を解体し、幅広い英知を結集して、汚染水対策を
先述のように、規制委や関連委員会の構成員は、JAEA、電力などの原発推進者が大半で、詰る所、原発の再稼働、新設、輸出、汚染水垂れ流しのための検討委員会である。
原子力は、総合科学であり、物理、化学、生物、地学、それらを基盤とする工学、農学、医学だけでなく、社会科学も関連する。規制委が中立を称するなら、原子力界中心の人選ではなく、国内外を問わず、広分野に人材を求めるべきである。そうすれば、もっと知恵が出る。世の中には、原子力界よりはずっと優秀な識者が多数いる。特に汚染水対策、除染対策については原発廃止を求める学者も交えて、議論すべきである。しかし、広く人材を求めれば、原子力ムラが崩壊するから、政府はそうしない。それが、原子力政策の本質である。
現代科学技術の水準は、原子力の制御、利用には程遠く、汚染水も制御できない規制委が極めて限られた能力を絞って国民騙しの新基準を適用しても、再度想定外の重大事故を招く可能性は極めて大である。従って、原発推進の規制委は即時解体し、あらゆる英知を福島の事故の収束汚染水対策、除染に結集し、完全脱原発の実施のために総力を挙げるべきである。 以上
「汚染水問題を憂う京都府民の会」(代表世話人 木原壯林)
2・23緊急討論集会@京都大学「原発再稼動をどうやって止めるのか」参加者一同
(関連サイト)
2・23緊急討論集会@京都大学「原発再稼動をどうやって止めるのか」
https://www.facebook.com/events/545177152256653/
http://d.hatena.ne.jp/byebyegenpatsukyoto/20140219/1392776473
2.23 緊急討論集会@京都大学
「原発再稼動を
どうやって止めるのか」
①福島からの特別現地報告
奥村岳志さん(ルポライター、南相馬市在住)
②「人類と共存し得ない原発再稼動を阻止し、即時全廃に追い込もう」
木原壮林さん(「汚染水問題を憂う京都府民の会」代表世話人、京都工芸繊維大学名誉教授)
③「原発再稼動の危険性と『避難できない』避難計画
…原子力規制庁交渉の現場から」
児玉正人さん(原発なしで暮らしたい丹波の会、京都の原発防災を考える会)