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【京都新聞 社説】大間原発提訴へ  被害及ぶ近隣の声聞け

京都新聞 社説】大間原発提訴へ  被害及ぶ近隣の声聞け
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20140329_4.html

 原発事故の被害は広範囲に及ぶのに、立地自治体でなければ切実な声は聞き入れられないのか。

 下北半島電源開発(Jパワー)が建設中の大間原発青森県大間町)と北海道函館市の距離は、海を隔てて最短で23キロ。福島第1原発事故では放射性物資が、原発30キロ圏をはるかに越えて多くの市町を汚染し、今も多くの住民が避難生活を強いられている。

 函館市が危機感を抱くのは当然だ。Jパワーと国を相手に、大間原発の建設中止と原子炉設置許可の取り消しを求め、近く裁判を起こす。市議会も全会一致で提訴の議案を可決している。多くの市民の願いと国は受け止めるべきだ。

 訴えの根っこには、立地自治体と近隣自治体の間で一線を画されていることへの疑問がある。建設や稼働に立地自治体の同意が求められるのに、なぜ近隣は必要とされないのか。福島原発事故を受けて、事故に備えた避難計画の作成義務が原発30キロ圏に拡大されたのに、立地以外の自治体は軽んじられているようにみえる。

 福井県原発から30キロ圏内に、京都府滋賀県の一部地域が入り、嘉田由紀子知事は「被害地元」という考えを強調する。滋賀県は関電と原子力安全協定を結び、原発新増設など重要計画の事前報告を受けることになったが、再稼働同意を含む立地自治体並みの協定は拒まれている。京都府は関電に立地自治体に準じた安全協定を求めるが、協議は進展していない。

 全国の自治体で電力会社と協定を結ぼうとする動きが広がっているが、再稼働の同意手続きははねつけられている。

 函館市の工藤寿樹市長は「事故が起きれば自治体が崩壊してしまう。裁判では周辺自治体がないがしろになっていることを訴える」と述べている。法廷での審理を、多くの原発周辺自治体が注目することになろう。

 大間原発は福島事故以前に、核燃サイクルが進まず、増え続けるプルトニウムを消費するため計画された。ウランとの混合酸化物(MOX)燃料をフル使用する、世界初の商業炉だ。前例がなく、事故が起きれば深刻な被害をもたらすと指摘される。

 大間原発に限らず、原発の稼働・再稼働は原子力規制委員会の安全審査をクリアすれば、それで良しとは言えない。最悪の原発事故を念頭におくべきだろう。事故の影響を被る広範囲の自治体で実効性のある避難計画が整い、少なくとも30キロ圏内の自治体の同意を得ることが欠かせないのではないか。

 福島の汚染、避難の広がりを踏まえた裁判であってほしい。

[京都新聞 2014年03月29日掲載]