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【毎日新聞】 シンポジウム:内部被ばく考える 国の「過小評価」に異議を 研究者らが意見 /京都

毎日新聞2011年7月7日付地方版】

シンポジウム:内部被ばく考える 国の「過小評価」に異議を 研究者らが意見 /京都
http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20110707ddlk26040498000c.html

 ◇矢ケ崎さん「晩発性がん発生の危険」
 ◇高橋さん「日米政府は被害を軽視」
 ◇山下さん「海産物汚染、監視強化を」

 放射性物質が体内に入る内部被ばくの危険について、米国の水爆実験でマグロ漁船「第五福竜丸」などが被ばくした「ビキニ事件」(1954年)などを検証しながら考えるシンポジウムが3日、京都市南区であった。広島・長崎の原爆以来、日米政府が加害者側に立って内部被ばくを無視し、被害の過小評価が東京電力福島第1原発事故でも続いている問題の重大さを研究者らが指摘した。【太田裕之】

 原爆症認定集団訴訟で内部被ばくを証言した琉球大名誉教授の矢ケ崎克馬さん▽原爆と米核実験について機密解除された米側公文書などを基に研究する広島市立大広島平和研究所講師の高橋博子さん▽ビキニ事件被災船員の調査を続ける高知県太平洋核実験被災支援センター事務局長の山下正寿さんらが講演。府内外から260人が参加した。

 矢ケ崎さんはガンマ線による外部被ばくと比較しながら、内部被ばくを「アルファ線ベータ線でDNAが高い密度で切断され、間違って再結合する可能性が増大して晩発性がんが発生したり、不安定なDNAが子孫に伝わる」などと危険性を説明。被爆生存者の病気発症率は一般国民の数倍であること、内部被ばくは原爆症認定訴訟の全判決で認められたことを紹介した。

 その上で、政府が現在も基本とする国際放射線防護委員会(ICRP)の基準は内部被ばくを無視し、そもそも核利用の功利主義で限度値が設定され健康被害の受任を強いていることを指摘した。

 高橋さんも、広島・長崎でもビキニ事件などの核実験でも米日両政府が放射性降下物と内部被ばくを軽視し、被爆者・被ばく者が切り捨てられてきた経緯を説明。学校などの屋外活動の制限基準値が年間被ばく線量20ミリシーベルトに引き上げられたことを「感受性の高い子供たちを被害の過小評価のために犠牲にする、とんでもないこと」、緊急作業時の250ミリシーベルトも「核実験に従事した兵士の基準に近い」と厳しく批判した。

 山下さんはビキニ事件被災船員の86年と89年の健康診断では造血機能障害などで計65人全員が健康に障害があったと紹介。福島原発事故で海に流された汚染水はビキニ事件と同様に海水の上層と下層の温度差のため拡散せず広範囲に移動する▽魚の計測では骨・頭・内臓を捨てた切り身だけで行われ、汚染魚が市場に出る可能性があるなどと指摘した。

 聴衆からも多数の質疑があり、高橋さんは将来の被害に備えてストロンチウム90が蓄積する乳歯の保管を提案した。山下さんは海産物の汚染の監視を漁協や生協、消費者が強める必要性を指摘すると共に、今後は地下水汚染が海に広がる恐れがあると警告。矢ケ崎さんは「国民が声を上げ、ICRPに従う多くの専門家に対してもものを言う必要がある。もう支配体制に従順に生きるのはやめよう」と呼び掛けた。

毎日新聞 2011年7月7日 地方版



京都新聞2011年7月7日付「凡語」】

内部被ばく
http://www.kyoto-np.co.jp/info/bongo/20110707.html

 「歯が生え替わるとき、乳歯は手元に保存して」。京都市内で先日開かれた福島第1原発事故の影響を考えるシンポジウムで、広島市立大広島平和研究所講師の高橋博子さんが呼びかけた▼乳歯は健やかな成長を願って屋根に投げ上げるなどの風習があるが、高橋さんの提案も傾聴に値しよう。体内に入った一部の放射性物資は歯に蓄積しやすい。保存乳歯から、もし微量でも検出されれば、内部被ばくの実態を明らかにする重要なデータになると指摘した▼内部被ばくは食べ物や水などを通して取り込まれた放射性物質が、放射線を出すことによって起きる。急性放射線症を起こす外部被ばくに対して、数年以上たってから表れることがあるので厄介だ▼とりわけ子どもへの影響を心配する声が大きくなっている。福島県の市民団体が実施した6〜16歳の尿検査では、10人全員から微量の放射性物質が検出された。健康に影響ないレベルとされるが、保護者としては不安が消えまい▼問題は外部被ばくに比べ、研究や政府の対応が遅れていることだ。福島県では、たまりかねて市町村が独自に住民の内部被ばく調査に乗りだし、県も全県民健康調査を始めた▼高橋さんはシンポで、原発作業員や学校の安全基準のハードルの低さを例に、政府は内部被ばく問題を過小評価していると批判した。乳歯保存の提唱は市民がここまで危機感を持って対応しなければならない状況への警鐘だ。

[京都新聞 2011年07月07日掲載]