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【『琉球新報』社説】原発国際公約 商談優先の「ご都合主義」だ

【『琉球新報』社説】
原発国際公約 商談優先の「ご都合主義」だ
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-183020-storytopic-11.html

2011年10月20日

 国内と国外とで方針を使い分けている。矛盾した姿勢は国際社会で到底通用しない。

 枝野幸男経済産業相国際エネルギー機関(IEA)の閣僚理事会で「原発の安全性を世界最高水準まで高める」として、当面は原発輸出から撤退しないことを打ち出した。

 同時に国内エネルギー政策に関しては「ゼロベースで見直しを進める」と述べ、「脱原発依存」を推進することを国際公約した。先の国連会合で野田佳彦首相も同様な姿勢を示しており、経産相の発言はこれをあらためて強調したものだ。

 東京電力福島第1原発事故を受け国内では脱原発依存を進める一方で、他国には日本企業の原発技術を輸出するという姿勢に整合性はあるのか。

 国際的な原発ビジネスからの撤退は「日本経済にマイナス」との判断だろう。「逆風」にある産業界からの圧力も想像できる。

 輸出産業として後押しし、先行き不透明な日本経済をけん引する役目を担わせたいとの思惑が見え隠れする。

 だが、原発事故は収束せず、その検証も不十分という段階で、原発ビジネス、すなわち商談を推進するというのはおかしい。金もうけ優先の「ご都合主義」と受け取られ、国際社会における日本への不信感を増幅させるだけだ。

 今回の原発事故で、日本国民は放射性物質の恐怖を思い知らされた。いまだ多くの住民が避難を強いられ、被害が各地で続いている。

 国民が原発事故で得た教訓は、事故はいつ起きるか分からないし、いったん事故が起きればもう遅い。安全性を高めても、原子力は完全に制御できないという事実だ。

 各種世論調査を見ても、国民の脱原発依存の流れは明らかだ。

 軍民の境界があいまいな原子力技術の輸出は、核拡散の懸念を生じさせる可能性もある。軍事転用されない保証などない。

 日本が取り組むのは原発輸出ではない。

 国民には原発を減らした分を再生可能エネルギーなど別の電源でどこまで補えるのかなど、中長期的な観点に立った、説得力のあるエネルギー政策を示す必要がある。

 技術先進国として、再生可能エネルギー、省エネ機器や省エネ住宅などの開発に技術力を傾注させ、世界の脱原発依存の先導役となることこそが日本の使命だ。