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【東京新聞 「こちら特報部」】仏教界にも広がる「脱」の動き 福井・永平寺でシンポジウム 原発の罪を説く 今の日本「滅公奉私」 原発によらない生き方を/全日本仏教会

仏教界にも広がる「脱」の動き 福井・永平寺でシンポジウム 原発の罪を説く 今の日本「滅公奉私」 

東京新聞 2011.11.03 「こちら特報部
http://www.asyura2.com/11/genpatu18/msg/198.html

 玄海原発九州電力)を再稼働させ、ベトナムへの原発輸出を再確認した野田政権。原発推進派の巻き返しはここにきて一気に加速したかに見える。その一方で、信徒数八百万人とされる曹洞宗大本山の一つ、永平寺福井県)が二日、“脱原発”の視点から生活や生き方を考えるシンポジウムを開催した。大きなうねりの起点とはならないか。  (出田阿生、佐藤圭)
                   
 舞台中央、楊柳ようりゅう観音のたおやかな姿が描かれた掛け軸が目を引く。線香が供えられ、ろうそくの炎が揺れる。読経の声が響き、「いのちを慈しむ〜原発を選ばないという生き方〜」と題したシンポジウムが始まった。

 会場となった福井県永平寺町の公共施設には約ニ百人が詰めかけた。客室には、袈裟けさ姿もちらほら見える。講演したのは、福島県飯館村の酪農家長谷川健一さん(58)と、地元の福井県小浜市で四十年以上も反原発運動を続けている真言宗・明通寺の中島哲演住職(69)。

 長谷川さんは動画や写真をスクリーンに映し出しながら、原発事故後の様子を語った。「家の近くを線量計で測ると、100マイクロシーベルトを超えて針が振り切れていた。それなのに行政は住民に高い線量を知らせるなと口止めした。専門家を呼び『安全だ』と言い続けるばかりで避難させなかった」

 断腸の思いで牛を処分し、故郷を追われ、三十五年かけて積み上げた人生のすペてを失った。友人の酪農家は「原発さえなければ」と書き残し、首をつった。百二歳の老人が「避難の足手まといになりたくない」と自ら命を絶った。長谷川さんが語るにつれ、会場からはすすり泣きが漏れた。

 「餓死した牛の死体を、豚が食っている。それが今の飯舘村」と長谷川さん。来月、村内で試験的に実施する除染には、四百㍍四方で六億円かかる見込みという。「付着するだけでなく、空気中に浮遊している放射性物質をどこまで除染できるのか。しかも山林の除染は無理。自分はいずれ戻れたとしても農業の再開は無理だし、若い人が子づくりや子育てできる環境じゃない」と行政の帰村計画を疑問視した。

 続いて中島住職が、四十年間で四十七万人を超える被ばく労働者を生み出した原発の“罪”を指摘。「根っこには、脱亜入欧を目指して負の面に目を向けてこなかった日本の近代化精神がある。今や日本は、滅私奉公ではなく『滅公奉私』一色。まずはエネルギー浪費社会を改めることから始めなければ」と強調した。

  福井県は国内一の原発立地県。関西電力美浜原発の三基、大飯原発の四基、高浜原発の四基、日本原子力発電敦賀原発の二基の計十三基の商業原発のほか、高速増殖原型炉「もんじゅ」と新型転換炉「ふげん」(廃止措置中)がひしめく。

 現在、美浜2号機、大飯2号機、高浜2、3号機が運転中だが、来年二月中旬までにはすべて定期検査に入る。

 関電は先月二十八日、定期検査中の大飯3号機の再稼働に必要な「安全評価」の一次評価結果を経済産業省原子力安全・保安院に提出した。安全評価の提出は全国の原発で初めて。原発への依存度が四割と高い関電は、来夏までの再稼働を目指すが、福井県の西川一誠知事は、福島原発事故の教訓を取り入れた安全基準の設定を条件としており、再稼働できるかは見通せない状況だ。

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仏教界にも広がる「脱」の動き 生活 見直すとき 会場はピリピリ 僧侶有志が開催、意義大きい

東京新聞 2011.11.03 「こちら特報部

 「お話が全部 心に入った」

 シンポに参加した福井市の主婦渡辺庸子さん(62)は「脱原発の集会はあちこちであるけれど、仏教のお寺が開催する意義が大きいと思う。お話は全部、すうっと心に入ってきた」と絶賛した。一方、原発が林立する若狭湾岸は、曹洞宗の信者が多い地域。信者には原発関係者も少なくない。寺の立場は微妙だ。そのためシンポの題名とは裏腹に関係者からは消極的な発言が相次いだ。

 「原発賛成でも反対でもない」(実行委員長の松原徹心・副監院)。「永平寺が反原発の運動をしようというのではない。必要悪として存在する原発の裏には欲望を野放しにした生き方があり、それを見直した方がいいのではないかと問題提起した」(西田正浩・布教部長)…。ピリピリ空気を反映するように、会場での録音・録画も禁じられた。

 さらにシンポ後の永平寺の記者会見では、同寺と原発との関係を問う質問が出た。文殊菩薩
ぼさつ
普賢菩薩にちなんで命名された高速増殖炉もんじゅ」(福井県敦賀市)と、新型転換炉「ふげん」のことだ。

 永平寺によると、動燃(当時)の理事長が同寺を訪れ、禅師に「菩薩様の知恵と慈悲にあやかろうと命名した」と報告。禅師は「それは良い」と答えたという。「寺がお墨付きを与えたのでは」との記者の質問に対し、松原実行委員長は「そうはとらえていない」と否定。その上で「永平寺原子力に関しては何もしてこなかった」と認め、「原発は地球上の生命の理論には合わないと知らされたと繰り返した。

 福岡原から参加した曹洞宗の住職甘蔗かんしゃ和成わじょうさん(67)は「今までにないこと。永平寺さんはよくぞやってくださった」と高く評価した。チェルノブイリ事故後、脱原発を訴える本「まだ、まにあうのなら」(一九八七年)を出版した妻の珠恵子さんに影響され、個人として脱原発を訴えてきた。

 今回は「曹洞宗の宗派としての意志とは無関係」(永平寺関係者)とはいえ、総持寺横浜市)と並ぷ大本山の僧侶有志が開催したという事実は大きい。甘蔗さんは「今後、宗派全体に及ぼす影響は分からない。だが曹洞宗だけでなく、仏教界全体で原発を再考する動きが出てきている。期待している」と話した。

  原発によらない生き方を/全日本仏教会

 伝統仏教の名宗派や各都道府県の仏教会などでつくる全日本仏教会(全日仏)は十二月一日の理事会などで、福島原発事故に関する宣言・決議文を採択する方向で調整している。

 奈良慈徹じてつ総務部長は「各宗派や檀だん信徒の問で原発のとらえ方は異なるが、今回の永平寺のような動きが出ている。大きな寺だけでなく、小さな寺も震災・原発でさまざまな取り組みをしている。仏教界全体の共通認識を宣言・決議文の形で問い掛けたい」と話す。

 全日仏は八月二十五日、「原子力発電所事故から思うこと」と題する河野太通たいつう
会長の談話を発表。「二度とこのような事故を繰り返さないためにも、日々の生活を見つめ直さなければならない」と訴えた。宣言・決議文も「会長談話の線に沿って具体的なものを出したい。脱原発という言葉は政治的に受け取られかねないので使わない。原発によらない生き方を示せればと思う」(奈良氏)。

 福島原発から半径三十㌔圏内には約六十の寺があり、檀信徒ともども避難を余儀なくされているという。全日仏では、東京電力との補償交渉などで各寺を支援している。事故がいまだに収束せず、放射能汚染の恐怖も消えない中、仏教界にとっても原発は大きなテーマになっている。

<デスクメモ>

 日ごろの罰当たりのついでに言わせてもらうが、原発事故の後、宗教界の動きは純すぎると感じてきた。数十万人の生活が破壊され、子どもたちは未来の夢も語れずおぴえている。この悲劇を前に宗教家がすべきことは山ほどあるはず。まず原発にNOを突き付けてほしい。ためらう理由がありますか。(充)