【秋田魁新報・社説】「もんじゅ」見直し 廃炉を決断する段階だ
【秋田魁新報・社説】
社説:「もんじゅ」見直し 廃炉を決断する段階だ
http://www.sakigake.jp/p/editorial/news.jsp?kc=20111202az
日本の長期的なエネルギー問題解決の切り札とされてきた高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、存廃を含め計画の抜本的な見直しを求める声が強まっている。
福島原発事故により、開発を支えてきた安全神話は崩壊した。これまで1兆円を超える研究開発費がつぎ込まれたが、実用化のめども立っていない。これ以上の税金を投入することに、国民の理解が得られるとは到底思えない。政府はもんじゅの廃炉を前提に、エネルギー政策の再構築を急ぐべきである。
高速増殖炉は「使った以上の燃料を生み出す夢の原発」として1967年に国が開発計画を打ち出した。原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、再び燃料に使う「核燃料サイクル」の要という位置付けである。資源小国の日本にとって、将来性が大いに期待されたのも無理はない。
だが、もんじゅは85年の着工から30年近くたち、その理想はすっかり色あせてしまった。94年の初臨界達成の翌年にナトリウム漏れ事故を起こし、それから14年以上も運転を停止。昨年5月にようやく運転を再開したが、今度は原子炉容器内で燃料交換装置の落下事故が発生して再び停止に追い込まれた。
トラブル続きのもんじゅに対し、国民の目が厳しくなるのは当然だ。もんじゅは運転停止中でも維持費などに年間約200億円が費やされる。もんじゅの前段階の実験炉などを含めると、これまでの高速増殖炉開発費は総額2兆円に及ぶとの試算もあるというから驚く。
しかも実用化の時期は先送りが繰り返され、現在では2050年ごろとされている。高速増殖炉開発への信頼性が揺らぐ中、今後何十年も巨額の予算を投入し続けることには強い疑問を抱く人が大半だろう。
加えて、未曽有の原発事故が安全面に対しても厳しい課題を突き付けている。もんじゅが扱うプルトニウムは、ウランの数十万倍もの毒性がある。また、核分裂で発生した熱を取り出すために使用するナトリウムは水や空気と激しく反応するため、火災が発生した場合に水は使えない。万一の際の被害規模は、一般の原発より格段に大きくなると指摘する専門家もいる。
費用対効果や安全性を総合的に考えれば高速増殖炉計画は断念し、その予算分を既存原発の安全性向上や放射性物質の処分対策、新エネルギー開発などに振り向けることが理にかなっているのではないか。
先に行われた政府の行政刷新会議の政策仕分けでも、もんじゅの開発計画を抜本的に見直すよう求める意見が相次いだ。野田佳彦首相は脱原発依存の方針を表明し、政府も原子力政策大綱の見直しを進めている。ならば政策仕分けの提言を真摯(しんし)に受け止め、もんじゅに対する判断を早急に示して2012年度予算に反映させてもらいたい。
(2011/12/02 付)