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【転載】東電への個別請求により全面賠償を勝ちとろう/福島老朽原発を考える会

(関連記事)
【12・27「避難の権利」集会 in 京都】「自主的」避難の賠償指針と福島市・渡利の現状〜「わたり土湯ぽかぽかプロジェクト」で子どもたちを守ろう!〜
http://d.hatena.ne.jp/byebyegenpatsukyoto/20111223/1324623932


阪上  武(福島老朽原発を考える会(フクロウの会)代表)

東電への個別請求により全面賠償を勝ちとろう/福島老朽原発を考える会
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/c4b250c1b0edca7e30772c5c5e72b6a3

自主避難の賠償問題について、まとめの記事を書きました。ご一読いただけ
れば幸いです。転載・転送歓迎です。
http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/12/post-0cd5.html
http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-3f33.html
よろしくお願いします。

阪上 武

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東電への個別請求により全面賠償を勝ちとろう
−原賠審が自主的避難者等に対する賠償方針を決定−

2011年12月20日
福島老朽原発を考える会

 12月6日の原子力損害賠償紛争審査会において、中間指針追補が決まり、自主
的避難者等に対する賠償方針が定まりました。追補は、賠償の対象地域を、福島
県の県北・県中・いわき・相双の市町村とし、子どもや妊婦は今年12月末まで、
それ以外は「事故の発生当初」の時期のみを対象に、避難者にも、残留者にも、
子どもと妊婦で一人一律定額40万円、それ以外の人については一人一律定額8万
円を支給するとしています。追補には問題点が多くあります。線量基準を設けず、
一律同額にこだわったところから、賠償の範囲についても額についても根拠があ
いまいで、避難区域内からの避難者に比べても不利な内容となっています。その
一方で、東電への個別請求による全面賠償を勝ちとる道を残すものとなっていま
す。

■「自主」避難者へも賠償を!…ゼロからの出発

 水素爆発の恐怖から避難せざるをえなかった!とても子どもを育てられる環境
ではない!政府が決めた避難基準は高すぎる!二重生活、二重ローンで生活は苦
しい!自主的に勝手に避難したのではない、避難せざるをえなかったことを認め
て欲しい!…私たちが国際環境NGO FoE Japanと共に行ったアンケートには、政
府が決めた避難区域外にいたというだけで、賠償の対象から外されようとしてい
た自主的避難者からの悲痛の声が寄せられました。
 「自主」避難者にも賠償を!をスローガンに掲げた運動は、6月の段階で、原
子力損害賠償紛争審査会が、中間指針の検討項目から、避難区域外からの避難者
への賠償の項目を外したところからスタートしました。ゼロからの出発でした。
 審査会委員への手紙、意見書、自主的避難者へのアンケート、審査会が開かれ
文科省前でのアピール行動、東電への要請行動、東電への請求書提出行動、審
査会事務局との交渉、自主的避難者を招いての集会、署名運動等々、さまざまな
はたらきかけを行いました。その結果、自主的避難者への賠償問題が、中間指針
決定後も審査会の継続課題となり、その後、私たちが強く要求した審査会での避
難者を招いての公聴会が実現し、今回の追補で、賠償が正式に認められるに至り
ました。自主的避難者のみなさんにはこの間、福島だけでなく、避難先の首都圏、
山形、静岡、関西、北海道からも駆けつけてくださいました。大きな成果だと思
います。

■賠償対象も額も明確な根拠なし

 追補はしかし、さまざまな問題点を含んでいます。私たちはこの間、自主的避
難者について、実費の全面賠償を求めてきました。しかし追補は、一律定額の賠
償を基本としました。なぜ一律なのか、なぜ40万円と8万円なのか、明確な根拠
はありません。また、対象地域の選定には線量基準がなく、なぜこの地域なのか
についても明確な根拠はありません。原子力ムラ出身の委員に気を使い、線量基
準を設けず、実費賠償を放棄したところから、賠償の範囲についても額について
も切れたたこのように根拠のないものになってしまいました。下記に問題点を列
挙します。

・ 自主的避難者の中には、引っ越し費用、二重生活に伴う生活費の増大、交通
費などにより、多大な経済的負担を負った方もいます。退職、転職を余儀なくさ
れ、収入が大幅に減少した方、借金をかかえた方もいます。これらの避難費用や
収入の減少や喪失、財産の減少などを積み上げると、今回の一律の賠償では不十
分な場合が多くでてくるでしょう。

・ 今回決まった子ども・妊婦の支給額40万円は、月4万円の10ヶ月分に相当しま
す。これに避難費用、精神的損害、付き添いの保護者の避難費用も含みます。そ
れに対し、避難区域内からの避難者については、精神的損害だけで月10万円(中
間指針では9月以降は月5万円に減額されることになっていましたが、実際には減
額されていません)であり、避難費用は別途実費が請求できます。自主的避難の
場合、子ども・妊婦以外ではさらに減額され、「事故の発生当初」に限定した一
人総額8万円にしかすぎません。不公平感は否めません。

・ 賠償期間があまりに短すぎます。期間は今年12月までで、来年1月以降につい
ては再検討することになっていますが、状況に変化がないことは目に見えていま
す。支払いが遅れれば、借金がかさみます。国や自治体の除染計画はおおむね2
年間で立案されていますが、除染に2年かかる、すなわちそれまでには線量が十
分さがらないということを考えれば、賠償期間は最低でも2年とし、それ以降も
検討できるようにすべきです。

・ 子ども・妊婦以外の住民に対して、「事故の発生当初」しか賠償が認められ
ないことは不合理です。子ども・妊婦への配慮は、賠償の範囲を狭めるために行
うのではなく、基本的な賠償範囲に追加する際に検討されるべきです。

・ 賠償対象の地理的範囲が、県北・県中・いわき、相双となっていますが、宮
城県丸森町などこの外側にも空間線量が高い地域が存在します。基本的には、日
本の既存の法令での公衆被ばく限度などを参照しつつ、自主的避難に対して幅広
く賠償を認めていくべきです。

■被ばくの不安・恐怖・危険回避のための避難の合理性を認めた意味

 一方で、追補は、被ばくへの恐怖と不安、その危険を回避しようと考えて行っ
た避難はやむをえないものであるとし、その合理性をはじめて認めました。これ
は中間指針にもなかった記載です。さらに、対象区域外や記載された損害項目以
外についても個別に賠償が認められることがあり得るとの記載があります。これ
により、一律定額を超える費用請求や、線量が高いにもかかわらず対象外となっ
た地域からの費用請求について、東電に対する個別請求により、精神的損害や、
賃金の減少分などの派生的費用を含む、全面的な賠償を勝ち取る道を開くものと
なっています。

 審査会の場で、実費を認めよと会場が騒然となったとき、能見会長は、指針は
あくまで指針にすぎず、実費については東電に個別に賠償を求めることができる、
となだめていました。原子力ムラ出身で、自主的避難者への賠償に最後まで抵抗
していた田中委員が、追補決定後に個別賠償は不要だと捨て台詞をはくように述
べていたのとは対照的でした。

 翌日、枝野経産大臣は、参議院決算委員会でこの問題についての加藤議員の質
問に「具体的に生じている出費は当然対象になる。東電に速やかに支払うよう指
示する」と答弁しました。さらに避難の影響による賃金減少など派生的な費用に
関しても「実際に損害が生じている場合は、当然損害賠償の範囲になる」と明言
しました。
 翌々日の復興特別委員会でも吉田議員の質問に、「今回は、定型的にある地域
を決めて、ここにいらっしゃった方については、そういった個別の事情を、例え
ばこれだけ実費掛かったんですとかというような話がなくても、あるいは避難さ
れた方もされなかった方も全ての方一律にということで、もう無条件でお出しを
してくださいということを審査会で決めていただきました。当然のことながら、
この地域の方が自主的に避難をしていれば、もう定型的にでもお金が出るという
ことは、避難をされることについて相当因果関係があるということも逆に裏付け
られています。したがって、個別に、このたくさんの実費が掛かっていらっしゃ
る方について賠償の対象にいたします。それから、この地域以外の方でも、相当
因果関係があって自主的に避難をされている方の実費等については、これは当然
賠償の対象になると思っておりますので、そうしたことができるだけ早くできる
ように、更に指導してまいりたいと思っております。」と述べています。
 復興特別委員会では、野田首相も、「本当に掛かった実費については、因果関
係があれば認める、外れている地域であっても相当因果関係があれば認める、こ
れが原則でございますので、それに基づいたきちっとした運用をすべきだと考え
ております。」と述べています。
 東電に個別請求しても、東電が支払いを渋る可能性があることから、このよう
な答弁は非常に重要だと考えます。

■東電への個別請求で全面賠償を勝ちとろう!

 自主的避難者に対する賠償は認められました。しかし黙っていては、一律定額
以上の賠償はされませんし、対象地域外では一銭も支払われません。全面賠償を
得るためには個別請求が必要です。特に、白河や宮城県丸森町など、線量が比較
的高いにもかかわらず対象区域から外れた区域からの避難者や残留者について、
全面賠償を勝ち取ることができれば大きな意味を持つことになるでしょう。東電
への個別請求により全面賠償を勝ち取ろう!

 さらに、不満をもつ方は多いとはいえ、一家4人で100万円近い額が、自主的
避難者だけでなく、残留者にも支払われるわけですから、これをもって避難を躊
躇している人が避難を決断するきっかけとなることが期待されます。
 福島市でも線量の高い渡利地区の住民が、行政が動かない状況に業を煮やし、
私たちや国際環境NGO FoE Japanも協力しながら自主的な一時避難計画「わたり
土湯ぽかぽかプロジェクト」を立ち上げようとしています。渡利地区から、線量
が低い市内西部の土湯温泉の旅館へ、子どもたちを優先した一時避難を民間の寄
付ベースで実現しようとするものですが、これも避難促進の一助となることを願
っています。
 さらに、賠償の支払いをスムーズに実行させること、なにより、避難先の住宅
の無償提供の根拠となっている災害救助法の適用を打ち切らせないことが重要な
課題になってきます。

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【関連記事】
福島の自主避難賠償、対象外の住民へ補償検討 政府(朝日、12月23日)
http://www.asahi.com/politics/update/1222/TKY201112220789.html