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【取材ノートから−京都新聞】「原発防災地域30キロ圏に拡大 避難計画、具体化急げ」

【取材ノートから−京都新聞原発防災地域30キロ圏に拡大 避難計画、具体化急げ
http://www.kyoto-np.co.jp/kp/rensai/syuzainote/2011/111026.html

舞鶴支局・石川健一郎


原子力安全対策の説明会に集まった住民からは、原発の安全性や住民避難についての質問が相次いだ(9月1日、舞鶴市中田・大浦会館)

 国の原子力安全委員会は20日、原発事故に備えた防災対策を義務づける地域を30キロ圏に拡大する方針を示した。関西電力高浜原発福井県高浜町)に隣接する舞鶴市はほぼ全域が圏内に含まれ、「自治体丸ごと」の移転想定が急務となるが、府・市の反応は鈍い。防災の具体像が見えない住民の不安は高まり、早急な避難計画の提示が求められる。

 「どうしたら1分でも早く脱出できるのか」。9月1日夜、高浜原発10キロ圏内の舞鶴市東部で開かれた原子力安全対策の説明会。地元住民ら約150人が詰めかける中、事故防止策を並べる原子力安全・保安院職員に対し、朝来区長協議会の四方筆樹会長は危機感をあらわに問いかけた。

 舞鶴市朝来地域は高浜原発の南西約5〜10キロの位置にある細長い谷あいの地域だ。「地震津波からは逃げられる。でも放射線からは逃げられるのだろうか」。説明会後の取材で、四方会長は複合災害時の避難経路を懸念した。朝来から陸路で避難するには、東西2ルートしかない。西の海沿い道路が津波で通行止めとなり、東から放射性物質が迫れば逃げ場がない。「桟橋を造り、護衛艦で住民を避難させたい。どこかの山の中に、住民が一度に移れる敷地と資材を準備してほしい」。四方会長の訴えは熱を帯びた。

 20キロ圏で94%、30キロ圏でほぼ全市民が避難対象となる舞鶴市は、受け入れ先の確保と自治体機能の移転が不可避だ。市危機管理防災課の蒲田正明課長は「地域コミュニティーを崩さないように避難計画見直しを行い、府の仲介で受け入れ先の自治体に打診している」とするが、東日本大震災から半年が過ぎた現在も、市民に具体的な計画を示せていない。

 府は8月、20キロ圏内の住民へ自治会経由で「原子力防災のしおり」を配布したが、受け取れない自治会未加入者は「ホームページで見られる」(府危機管理・防災課)とするなど、防災情報の周知に手落ちが目立つ。

 新方針には、5キロ圏を目安に、特定事故で直ちに避難する「予防防護措置区域(PAZ)」が盛り込まれた。高浜原発5キロ圏内にある舞鶴市杉山地区の松岡良啓さん(65)は「避難を地域として話し合ったことがない」と話す。「みな『そろそろ考えなくてはならない』と内心思っているが、機運が高まらない。防災計画を検討する府や市の会議に住民が参加できないことも、危機意識を共有しにくい一因になっている」と指摘する。

 朝来区長協は5月、防災対応を考える委員会を立ち上げたが、地域の13町内会のうち自主防災組織が4町内にしかないなど防災組織のもろさも浮かび上がった。「一刻も早く避難しようとすれば、混乱が予想される。それを防ぐためには、安心感を与える防災計画を示してもらい、住民が体で覚えなくてはならない」と、四方会長は訴える。

 防災の現場で市民自らが果たす役割は大きい。市民が自分自身を守るためにも、府と市は万一の際の避難方法や受け入れ先の具体化を急がなくてはならない。

[京都新聞 2011年10月26日掲載]