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【噴出する「原発防災」計画の矛盾①】対象人口全国最多の約94万人、大量避難「非現実的」/原発防災域拡大で茨城県

大量避難「非現実的」/原発防災域拡大で茨城県
http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/administration/20111124000135

2011/11/24 10:29

 東京電力福島第1原発事故を受け、事故に備えた防災対策の重点地域が、原発の半径8〜10キロから約30キロ圏内に拡大されることになった。日本原子力発電東海第2原発東海村)を抱える茨城県の対象人口は、全国最多の約94万人。防災計画の改定には課題山積で、大量の住民避難には「非現実的」との声まで出ている。

代替機能検討

 対象が現行の5市村から14市町村となった茨城県の橋本昌知事は、今月9日の記者会見で「区域ごとにどういう準備をしたらいいのかが分からないと計画も作りようがない」と国が早急に具体案を示すべきだと指摘した。

 防災計画では避難所や交通手段の確保、情報伝達の確立が必要。県庁所在地の水戸市全域も含まれるため、災害時に拠点となる県庁や県警本部の代替機能の検討も迫られる。国などが対策本部を置くオフサイトセンターも原発から11キロに位置しており、役割を果たせるかは疑問だ。

 財政面では、10キロ圏内を中心に県が設置する放射線量を測定するモニタリングポストの増設が必要になるほか、市町村が備蓄する安定ヨウ素剤も現在は10キロ圏内に限られており、追加配布するとなると負担は大きい。

高松市と協議

 「30キロへの拡大は当然だが、これだけの人を避難させるなんて今のままでは非現実的な話だ」

 水戸市の高橋靖市長は約27万人を避難させる難しさを吐露。「他県や他市町村の協力も必要。『何十キロ圏外の自治体は被災者を受け入れなければならない』とか、国が指針を出してくれれば計画が立てやすくなる」と県外避難も視野に入れる。

 一方で国に頼らない独自の取り組みも進める。10月初旬、姉妹都市原発を抱える福井県敦賀市と被災者を受け入れる相互応援協定を締結。さらに親善都市の高松市滋賀県彦根市とも締結に向け協議を始めた。

物を言う権利

 運転開始から30年以上経過し、定期検査中の東海第2原発はトラブルが頻発。村上達也東海村長は脱原発の姿勢を鮮明にしており、再稼働には紆余(うよ)曲折も予想される。防災地域拡大で、原発の運転や増設を承認するかどうか、締結している自治体が実質的な権限を持つ「原子力安全協定」の見直しも必至だ。

 協定は日本原電が県と東海村、隣接4市と締結。水戸市などは蚊帳の外だった。福島第1原発事故後には参加を要望したが、部外者扱いは変わらず、高橋市長は「原発に物を言う権利はいただきたい」と主張する。

 村上村長は、国や県の指示待ちではなく、市町村が自主的に考える必要性を強調。「水戸市などが協定に入りたいと言うのは当然だし、入る権利がある。東海村だけで独り占めするつもりはないし、責任を負おうとも思わない」と話している。


茨城新聞】2011年10月21日(金) 
原発防災の重点地域見直し案 東海第2は94万人対象に
http://ibarakinews.jp/news/news.php?f_jun=13191206858272

原子力安全委員会(班目春樹委員長)の事務局は20日原発事故に備えて防災対策を重点的にとる地域として、従来指針で「EPZ」の呼称で示していた原発から半径8〜10キロ圏の範囲を半径約30キロ圏に拡大するなど、原発からの距離によって3区域に分ける見直し案を作業部会に提示した。本県の東海第2原発は30キロ圏の対象人口が約94万人に拡大するとされ、県や対象自治体は避難対応を含めた地域防災計画の見直しを迫られることになる。

原発から半径約5キロ圏を目安に、事故後に直ちに避難する区域を新設。約50キロ圏をあらかじめ対策をとる区域とした。作業部会は検討の上、月内に最終決定する方針。

東京電力福島第1原発事故では、現行指針を大きく超える地域が住民避難の対象になるなど、防災対策の不備が指摘された。

半径約30キロ圏への拡大が決まれば、対象市町村は44から135と約3倍に増え、水戸市京都市鹿児島市など人口が多い県庁所在地が含まれる。国や自治体の備えも抜本的見直しを迫られそうだ。

第1原発事故では、放射性物質の拡散を予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」が機能しなかった。このため今後は予測値ではなく、放射線量の実測値や事故の進展に応じた対応をとることを盛り込み、放射線量測定装置(モニタリングポスト)の拡充が必要と強調した。

従来のEPZに当たる地域は「緊急防護措置区域(UPZ)」として原発の半径約30キロ圏に拡大し、その内側に、特定の事故の場合は直ちに避難する「予防防護措置区域(PAZ)」を新設し、目安は半径約5キロ圏とした。また甲状腺被ばくを避けるために安定ヨウ素剤を配備するなどの対策をとる「放射性ヨウ素対策区域(PPZ)」を新設、半径約50キロ圏内を目安にした。

■避難準備、県内9市町増
原子力防災指針の見直しに伴い、従来のEPZが半径30キロ圏のUPZに拡大されると、東海第2原発周辺では対象自治体が現在の5市村から14市町村に増加。県庁所在地の水戸市全域が含まれ、県の集計では対象人口は全国の原発で最も多い約94万人に膨れ上がる。県や各自治体は地域防災計画の具体的な見直しに乗り出すが、100万人規模の避難計画策定や県庁、オフサイトセンターの機能移転先の確保など課題は山積みだ。

原子力安全対策課によるとEPZの同原発10キロ圏は▽東海▽日立▽常陸太田▽那珂▽ひたちなか-の5市村で、30キロ圏に拡大されると▽水戸▽高萩▽常陸大宮▽笠間▽大洗▽茨城▽城里▽大子▽鉾田-の9市町が新たに加わる。2005年のデータを基にした県の試算では、対象人口は約24万人から4倍の約94万人に増加する見通し。

PPZとなる同原発50キロ圏は県内22市町村とともに福島、栃木両県の一部も含まれる。

県は、9月に発足した県地域防災計画改定委員会の検討部会で、専門家の意見を踏まえて見直し作業を本格化する。ただ、100万人規模の避難計画は過去に例がなく、30キロ圏内に含まれる災害対策拠点の県庁やオフサイトセンターの機能移転の想定も必要となり、同課は「通報連絡や資機材の配備、避難ルートの確保などあらゆる計画の見直しが必要となる」と説明する。

水戸市の高橋靖市長は「福島第1原発事故を踏まえれば拡大は当然。国や県の広域避難計画を踏まえ、避難の在り方、交通手段や避難先について議論していく」と話した。