バイバイ原発・京都 のブログ

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【毎日新聞:風知草:曲がり角からどこへ?=山田孝男】「もんじゅの存廃をめぐる攻防は、マスコミの表面でこそ廃炉派が優勢だが、政策の決定権は推進派が握っている」「原発からあふれ出ようとしている膨大な核のゴミをどうするのか。夢の中にとどまって現実から目をそらすという選択肢はない。夢から覚めて繁栄の後始末に立ち向かうしかない」

毎日新聞】風知草:曲がり角からどこへ?=山田孝男
http://mainichi.jp/select/seiji/fuchisou/news/20111128ddm002070111000c.html

 高速増殖原型炉もんじゅを視察した細野豪志原発事故担当相(40)と記者団の間で、こんな問答があった。

 −−感想を。

 「ひとつの曲がり角にきているのかなと……」

 −−廃炉も含めて検討すべきだと考えますか。

 「……そういったものも含めて検討していくべきだと思います……」(26日)

 これが、細野「廃炉検討」発言の核心である。

 細野が何かものすごいことを言ったのかというと、そうではないと私は思う。

 もんじゅの存廃をめぐる攻防は、マスコミの表面でこそ廃炉派が優勢だが、政策の決定権は推進派が握っている。推進派は騒がない。その沈黙には「言うだけ言わせておけ」という含みがある。微妙な情勢の中で細野は明言を避けた。それが真相だと筆者は考える。

 何かものすごいことが決まったかと見えて、実はそれほどでもないのが、野田佳彦首相肝煎りの「提言型政策仕分け」である。日曜(20日)返上で激論の末、もんじゅを「抜本的に見直す」ことにした。

 仕分け人は、もんじゅ関連の来年度予算概算要求215億円のうち、22億円のムダを指摘した。だが、もんじゅは必要かという基本の議論を避けているから、残る193億円に切り込めない。「抜本的に見直す」という宣言は「後はよろしくお願いする」という仕分け人の希望の表明に過ぎない。

 ではなぜ、政策仕分けは基本的な議論を避けたのか。原子力政策の基本を検討する原子力委員会近藤駿介委員長)に遠慮したからだろう。

 もっと言えば、仕分けを所管する行政刷新会議に、原子力委の上部組織であるエネルギー・環境会議(議長・古川元久国家戦略担当相、関係閣僚と民主党幹部で構成)がクギを刺したのではないか。「原発の賛否に踏み込むな」と。「来年夏、新原子力政策大綱がまとまる。それまで騒ぐな」と。

 報道の表面を見ていると、もんじゅ廃炉へ向かって進んでいるように見えるが、実態は違う。残念ながら、それが現実だ。構想44年、延べ1兆円の国費を投じてなお、もんじゅは動かない。動く見通しもない。だからこそ、震災直後に研究開発中止の声が高まったが、今は「ムダを省いて開発を」という論者が巻き返している。

 原発から出る核のゴミ(使用済み核燃料)を再処理してプルトニウムを取り出し、それを燃やすのが高速増殖炉だ。この循環(核燃料サイクル)が成立しない限り、ゴミは原発にたまり続ける。現に昨年9月時点で全原発の使用済み燃料貯蔵プールの容量2万420トンに対し、既に66%にあたる1万3530トンが蓄積している。

 このデータは今年5月、筋金入りの脱・原発、脱・核燃サイクル論者である自民党河野太郎衆院議員(48)が経済産業省に請求して明るみに出た。東京電力・福島第1と第2、中部電力・浜岡の各原発停止を前提に試算しても、あと6年弱で使用済み燃料プールは満杯だと河野は指摘している。

 原発からあふれ出ようとしている膨大な核のゴミをどうするのか。夢の中にとどまって現実から目をそらすという選択肢はない。夢から覚めて繁栄の後始末に立ち向かうしかない。首相も、原発事故担当相も、曲がり角をしっかり曲がっていただきたい。(敬称略)(毎週月曜日掲載)

毎日新聞 2011年11月28日 東京朝刊