【愛媛新聞 社説】「電源交付金 脱原発政策と矛盾する制度だ」「新規原発のための資金積み立てを国民が許すはずがない」
愛媛新聞・特集社説2011年11月28日(月)
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201111286915.html
出所:http://www.town.horonobe.hokkaido.jp/www4/section/soumu/le009f0000000fl1.html
東京電力福島第1原発事故を受け、政府の行政刷新会議は「提言型政策仕分け」の中で、原子力・エネルギー分野について電源立地地域対策交付金の必要性を精査し、安全対策の拡充を提言した。
交付金の原資である周辺地域整備資金の積立額についても先月、会計検査院が過大と評価し減額できると指摘している。政府の「脱原発依存」の方針に照らしても、建設が不透明な原発のための資金プールは許されない。
新規原発の地元対策である交付金だが立地は進まず事故後に辞退する自治体もある。国は今こそ、根本的に制度のあり方を見直すべきだ。
会計検査院の指摘は、まことに明快だった。
全国で計画中の原発14基の着工が重なり交付金が不足するのを防ぐため積み立てられているのが整備資金。これについて検査院は「立地は進んでおらず、使われる見込みはない」と切り込んだ。
資金の残高は2010年度末で1230億円に上る。このうち原発事故対策に拠出された約500億円をのぞき、「着工済みの3基分73億円あれば十分」と、約657億円を減額可能とした。
枝野幸男経済産業相が「原則的に指摘に従った対応を取る」と応じたように、まずは速やかに減額すべきだ。
ましてや今は原発事故の収束や安全対策、震災復興に膨大な資金が必要な時期だ。新規原発のための資金積み立てを国民が許すはずがない。
そもそも検査院の指摘は今年が最初ではない。02年以降、幾度も余剰金を指摘している。いずれも着工を見越した交付金についての指摘であり、05年の報告書では警告にまでいたっている。
にもかかわらず交付金は生き残ってきた。国が推進してきた原発政策と、立地自治体の財政事情が不可分の関係を築いてきたからだ。
中国電力上関原発が予定されている山口県上関町は、原発交付金が当初予算の4分の1を占める。町幹部は「他に財源があるなら教えて」と苦しい事情を吐露する。一方、着工予定が37年も遅れている東北電力浪江・小高原発(福島県)の地元自治体は脱原発を掲げ、交付金を辞退した。
国が交付金で自治体を縛り付けた結果が、こうして各地で混乱を生んでいる。
原発事故で新規立地がほぼ不可能となったいま、交付金制度の廃止は一里塚にすぎない。地方を混乱させ日本に未曽有の危機をもたらした原発政策を猛省し、国は原発に依存しない社会を国民に提示しなければならない。
国は来年の夏をめどに、新たな原子力政策大綱をまとめるという。脱原発依存を前提としたエネルギー政策の策定と合わせ、目が離せない。