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【東京新聞 こちら特報部】「緑の党」日本に根付くか 須黒奈緒・みどりの未来共同代表に聞く 経済主義にサヨナラ 13年参院選「世論味方 2、3議席は」 責任持って国民自ら決断 原発は即時全面停止 再生可能エネ 積極的に促進 識者の見方 野党との差別化、具体策カギ

東京新聞 こちら特報部】「緑の党」日本に根付くか 須黒奈緒みどりの未来共同代表に聞く 経済主義にサヨナラ 13年参院選「世論味方 2、3議席は」 責任持って国民自ら決断
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 宮城県議選などで脱原発を唱える新顔が躍進するなか、国政レベルで原発阻止を掲げる新党「緑の党」の設立準備が進んでいる。2013年の次期参院選挙に挑む予定で、幅広い結集を呼びかける第1回のフォーラムが20日、東京都内で開かれる。

 欧州のように「緑の党」は今後、日本に根付くのか。母体となる「みどりの未来」共同代表の須黒奈緒・杉並区議(32)や識者に聞いた。(鈴木泰彦、上田千秋)(11月15日 紙面から)

 「福島原発の事故後の世論は脱原発です。2議席か3議席は獲得できるのではないか」

 日本版「緑の党」で臨む意向である2年後の参院選について、須黒氏はこう手応えを語る。

 脱原発に取り組む地方議員らでつくる「みどりの未来」は、2008年11月に発足した。1990年代から連携して活動してきた地方議員たちの「虹と緑」と、中村敦夫参院議員が立ち上げ2004年の参院選に挑んだ「みどりの会議」を引き継いだ「みどりのテーブル」とが合流した。

 会費などで活動を支える会員、サポーターは計500人。参加している地方自治体の首長や議員は65人を数える。

 須黒氏が政治の世界に足を踏み入れたのは、04年の参院選イラク戦争反対運動で知り合った仲間が「みどりの会議」の候補者となり、その応援をしたのがきっかけ。NGOでも活動し、07年に「社会の構造の根本を変えなければ問題は解決できない」と杉並区議選に挑戦し、27歳で初当選した。

 2期目の今は区政にかかわりながら、20日に開くフォーラムの準備に飛び回る。「みんなでつくろう!緑の党」のタイトル通り、参院選をにらんだ「緑の党」の旗揚げ準備のための集会だ。

 非戦や脱原発を掲げる「緑の党」は1970年代以降、欧米で誕生。欧州議会では数十人の議員が活動。とくに脱原発にかじを切ったドイツでは勢いを持ち、連邦政府の政策転換に大きな影響を及ぼした。

日本でも国政に登場し、キャスチングボートを握り、環境優先や脱成長、社会的公正などの政策を実現させようというのが当座の目標だ。

 「これまでは経済成長至上主義の前提のもとで、いのちや暮らしが議論されてきた。根本にあるのは、経済が成長すれば幸福になれるという考え。まず、人のために経済はあるという原点に立ち戻らないといけない」

 原発はそうした経済成長神話の象徴だと言う。「燃料であるウランの採掘時や、平常運転時であっても、労働者の被ばくという犠牲のうえに成り立つのが原発。ともにサヨナラしなくては」

 原発をどう扱うか、方針を決めるにあたっては国民投票も考慮する。「自分で意思を表明して何かを決めるということが日本ではなかった。人を選ぶだけで、個別の政策について直接意見を言える場がなく、『お任せ民主主義』だった。だから原発についても知ろうとしなかったのではないか。『参加する民主主義』も『緑の党』の大きなテーマ。自分たちで決め、その責任を負わなくては」とアピールした。

 「緑の党」は来年夏に旗揚げし、参院選で10人以上の立候補を目指している。比例代表ほか、大都市部では選挙区への候補擁立も視野に入れ、市民団体やNGOとの連携を探る。

 別に「緑の党」の運動を表明している人類学者の中沢新一氏(61)とは協力していくことで合意しているという。

緑の党」根付くか 原発は即時全面停止 再生可能エネ 積極的に促進 識者の見方 野党との差別化、具体策カギ

 だが今の選挙制度で小政党の挑戦が不利なことは承知している。候補一人の供託金が比例代表で600万円、選挙区で300万円。選挙資金は最低でも1億円は必要となる。

 須黒氏は「欧米は供託金がない国が多く、英国やカナダは7万円ほど。1000円の10万人カンパ運動で資金の壁を乗り越えたい。供託金を含め誰でも選挙に出られる制度に見直したい」。

 「脱原発依存」や「減原発」を語る野田佳彦政権については「原発ゼロをめざすというゴールや政治意思を明確にしていない」とバッサリ。

 同じように「脱原発」を掲げる野党と競合することになるが、差別化はできるのか。

「ほかの政党は一定期間を置いているが、『緑の党』は再稼働もさせない即時全面停止だ」と言い切る。

 原発維持派からは、「脱原発」を進めればその代替となる火力発電所の稼働コストがかさむという指摘が出ているが「一時的に燃料コストの負担が増えても、安全を最優先すべきだ。再生可能エネルギーでの取り組みは日本では遅れているが、新たな成長が見込める分野で、積極的に取り組むべきだ」と主張する。

 過去、「みどり」を旗印にする政党などが国政選挙で伸びなかった。その理由を「小泉純一郎政権の04年の参院選時、経済はなんとなくうまくいっているように皆感じていて、代替案を訴えても浸透できなかった」と分析する。それが福島の事故を経験した今、状況が変わった、とみる。

 「原発の危険性に疑問を持ち、自分自身に突きつけられた問題だととらえる人が増えた。危機意識が2年後の参院選までになくなることはないでしょう」

 震災や原発事故で延期され、9月に行われた福島県郡山市議選(定数40)では、トップをはじめ3議席を「みどりの未来」の会員が占めた。

 「ドイツの『緑の党』も、初めは『変なことを主張する人たちが出てきた』『伸びていくはずがない』と、とらえられていたと聞く。新しい政党が出てこないと民主主義は活性化しない。無党派などの受け皿として、理念を訴えていきたい」

<デスクメモ> 女性の比率は参院議員が18%、地方議員は平均11%にすぎない。「みどりの未来」の会員はほぼ半数が女性という。緑の党構想では候補者を男女同数とする割当制も検討中だ。同制度を導入したドイツの緑の党は議員の59%が女性と聞く。身近な放射能問題に続いて「女性革命」の導火線となるのか。(呂)

 すぐろ・なお 1979年、栃木県栃木市出身。2007年の杉並区議選で初当選。今年4月、再選を果たした。「みどりの未来」では、八木聡長野県大町市議、中山均新潟市議、兵庫県の松本なみほ氏とともに共同代表を務める。

東京新聞 こちら特報部 2011年11月15日